The Motown Box、走り書き。

The Motown Box ブルース
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同じ音源を使って手を替え品を替え何遍も何遍もリイシューし続けるアーティストといえば、まず思い浮かぶのがローリング・ストーンズでしょうか。

ビートルズはといえば、リリースの機会こそ多いものの同じ音源を何遍もというと、実はそうでもありません(これはこれで厄介と言えますが)。

カーペンターズなんかは、結構いい線いっているかもしれません。

ところで、ミュージシャンで言えばローリング・ストーンズと決まったところで、一方レコード・レーベルとなるとどうでしょう。

真っ先に思い浮かぶのがモータウン。

こちらも何かにつけてベスト盤を出してきます。

しかもレーベル全体を俯瞰したものから各アーティスト毎に至るまで、そのアイテム数はストーンズをはるかに凌ぎます。

さらに毎度毎度収録曲も音源もほぼ同じ。

いくらモータウンが大好きとはいえ、これに付き合うのはいくらなんでも荷が重い。

しかし、たまーに思いもよらぬお宝が出るものです。

このThe Motown Boxもそのひとつです。

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すべてステレオテイク、28曲は新ミックス

このボックス、大きく謳ってはいませんが一言で言うなら「ステレオ音源でたどるデトロイト期のモータウン史」ということになるでしょう。

それだけなら、またベスト盤かもういいよ・・・と「スルー」するところですが、放っておけないのが以下の2点。

  1. 収録曲72曲中28曲が新たにミックスされている。
  2. 既出曲もロングバージョン等比較的珍しい音源が多い

この2点がこのボックスを巷に溢れる凡百のベスト盤とは異なるものにしており、「モータウン史」のみならず「レコーディング史」的な性格をも与えていると思います。

Jimmy Mack (Extended Stereo Mix/2005)

モータウンのレコーディング史的な面白さが聞こえてくるリミックス

さてこのリミックス、リミックスという言葉通りマルチトラックに遡って各トラックの音を配置し直しているわけですが、「録って出し」のようなむき出しの音に聞こえます。

ははぁ〜ん、この曲は3トラック、あっちは8トラックで録音されてたんだな・・・、と推測(妄想)できるほどで、乱暴な言い方をすれば「無造作」な印象。

しかしこれが功を奏しており、従来の音源ではオミットされていた各楽器、ボーカル、コーラスパートや、さらには細かいニュアンスまで聞こえてくるといった具合。

ギターはこんなフレーズを弾いていたのか、コーラスパートは元々こんなアレンジだったのか、・・・と再発見できるところも多数。

スモーキー・ロビンソンのスキャットにも、く〜たまらんっと悶絶できます。

楽しいったらありません。

私があらためて強く印象を受けたのは大きいところでこの3つ。

  1. デトロイト期でもおそらく複数のレコーディングスタジオで録音されている。
  2. アレンジが思っていた以上に練りこまれており、またセッションメンバーも思いのほか多い。
  3. 楽曲の良さがモータウンソウルの要であり、そのフィーリングがビシビシ伝わってくる。
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モータウン版「アンソロジー」

さて、「録って出し」のような音像なので、従来の公式テイクとは印象が異なります。

いわゆる「モータウン・サウンド」を想像して、「なるほど、モータウンのベスト盤か。プリーズ・ミスター・ポストマンもマイ・ガールも入ってるし、ちょっと買ってみるかな」という方は拍子抜けするでしょう。

当たり前と言えばそれまでですが、当時のモータウンはマスタリング時にかなり意図的な音作りをしていたわけです。

私見ではデジタル時代になってからのモータウン・デトロイト期の「公式」音源は、4枚組のボックスセット「HITSVILLE USA」に尽きると思います。

ビル・イングロットさんによる丁寧な仕事ぶり。リイシューの鏡です。

まず「HITSVILLE USA」があり、そしてこの「The Motown Box」を聴く。

つまり、このボックスはビートルズで例えるならば「アンソロジー」なのです。

再構成された音で、モータウンの歴史と音楽を辿り直すのです。

楽しすぎて眠れません。

モータウン・ソウルのフィーリング

ところでジェイムズ・ボールドウィン原作による映画「ビールストリートの恋人たち」、2019年の公開当時私はこの作品を非常に興味深く観ました。

ざっくり言ってしまうと、60年代のアメリカ黒人社会を舞台にした男と女の恋愛ドラマなわけですが、私はそこに同時代のブルースやリズム&ブルース、ソウルミュージックを聴いた時に感じるのと同じスウィートネスを溢れるほどに感じたのです。

そして、それと同じスウィートネスをこのThe Motown Box、特にスモーキー・ロビンソンの歌声に聴くのです。

モータウン、特にデトロイト期の音楽、そして精神的支柱に、スモーキー・ロビンソンが果たした役割の大きさはすでに語り尽くされているとは思いますが、この新ミックスによる歌声、フィーリングはそのことを改めて、いやそれ以上に実感させてくれます。

そしてそのフィーリングがそのまま、当時のアメリカの社会の少なくともその一部を象徴しているのではないかと想像するのです。

その後、スモーキー・ロビンソンを中心とした制作チームの関わりが薄れていく頃、デトロイトでインディレーベルとしてスタートしたモータウンは拠点を西海岸に移していくことになります。

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